第二回ロービジョン・ブラインド川柳コンクール
優秀作品および入選作品発表

最優秀賞

ありがたや
券売機のない
ラーメン屋

  • 名前 ナ月
  • 性別 男性
  • 部門 見えにくさを感じている方部門
    (ロービジョン)
  • 解説 電車なら初乗りの切符買って向うで清算するって手もあるけど、食券じゃそうもいかない。座って普通に注文できるお店は助かりますねぇ。
  • 講評 効率化、合理化ばかりが優先され、生活のあらゆる場面で機械化が進んでいる。何気ない会話や触れ合いの少なくなった昨今の風潮を、直接的に抗議するのではなく、やんわりと表現した。見えにくさを感じている人にとって、優しい声かけは何よりも嬉しいね。

見えにくさを感じている方部門賞

転がった
小銭へ耳が
追いかける

  • 名前 五十嵐静子
  • 性別 女性
  • 部門 見えにくさを感じている方部門
    (ブラインド)
  • 解説 落とした小銭の音を追いかけ、音が止まったところへ手を伸ばす。
  • 講評 落とした小銭が転がって行く。見えにくい人が小銭を探すのは大変なことだが、例え5円玉一枚だって行方不明になったら悔しい。瞬間的に体が反応したことを上手く切り取った。「耳が追いかける」の表現がいいね。

メディカル・トレーナー部門

杖や犬
まだ壁あるかな
わが日本

  • 名前 ココナゴの父
  • 性別 男性
  • 部門 メディカル・トレーナー部門
    (盲導犬歩行指導員)
  • 解説 白杖や盲導犬への理解不足。盲導犬の受け入れ拒否。まだまだ、認知や共存が出来ていない。2020年へ向けても改善が急務!
  • 講評 盲導犬が店内に入ることを許さなかったり、白い杖に冷たい視線を浴びせるなど、社会の無理解を指摘する作品は他にもいくつかありました。残念ながら、日本はまだまだまだ成熟していませんね。現実を指摘する作品の意義を評価しました。

サポーター部門

健常者
なる呼称こそ
恥ずかしい

  • 名前 右田俊郎
  • 性別 男性
  • 部門 見えにくさを感じている方部門
    (一般の方)
  • 解説 多数派に属しているというだけのこと。
  • 講評 「健常者」という表現がまかり通っていることの不思議。「後期高齢者」などという表現も酷いですね。どちらも、名付けた人の〝上から目線〟〝他人事〟感覚が気になります。当事者の立場や気持ちを忘れないようにしたいと思いました。

NEXT VISION賞

満開の
桜並木を
鼻で観る(鼻できく)

  • 名前 三色すみれ
  • 性別 男性
  • 部門 見えにくさを感じている方部門
    (ロービジョン)
  • 解説 やわらかい香なので、一本だと分かり難いが、並木になると満開の桜がよくわかります。まるで鼻で見ているようです
  • 講評 この川柳を詠んだとき、目の前にパッと桜の桃色が思い浮かびました。桜並木なので、ずっと桜に囲まれた所を歩いて行っているのでしょう。眼ではなく、かぐわしい香で桜を見ているように心に想像が広がっていきます。それぞれ思い思いの楽しみ方や感じ方を大切にして、新しい季節を迎えたいですね。皆さんの心にも桜が咲きますように。

総評

第二回ロービジョン・ブラインド川柳コンクールによせて

選者 八木 健

川柳は、俳句とともに盛んに作られていて、「サラリーマン川柳」をはじめ様々なコンテストが開催されている。シルバー川柳、女子会川柳、トイレの川柳、いい夫婦の川柳、ハラスメントの川柳など、枚挙にいとまがない。そうした中で「ロービジョン・ブラインド川柳コンクール」は、どのコンテストにもない新しい視点と特徴がある。

まず、一つは、読者に「気づき」をもたらすことである。応募作品の中には、切実な現状や要望が書かれたものもあるが、それらは川柳にならなければ気づかれなかったことである。

もう一つは、川柳の詠み手の立場を分類していることである。このことによって、「見えにくさを感じている方」「メディカル・トレーナー」「サポーター」が、普段、体験したことや思っていることを、それぞれの立場から率直に表現し発信する、機会と場をもつことができた。

さらに、このコンクールの意義として、「見えにくさを感じている方や関係者から見た、その場その時の〝時代〟が川柳という形で記録される」ということがある。こんな世の中でこんな風に感じていたのだということを、川柳で後世に伝えることができる。

心温まる川柳がたくさん詠まれる社会にしていかなければならないが、「ロービジョン・ブラインド川柳コンクール」の果たす役割は大きい。

八木 健 先生 プロフィール

経歴

  • 元NHKアナウンサー
  • NHK「俳句王国」司会10年
  • 元『川柳マガジン』選者
  • 元愛媛新聞月刊誌『アクリート』川柳欄選者

現在

  • 日本農業新聞 俳壇選者
  • 日本農業新聞 川柳選者
  • 月刊俳句総合誌『俳壇』選者17年
  • 愛媛CATV『八木健の川柳天国』主宰
  • 愛媛CATV『八木健の俳句遊遊』主宰
  • 滑稽俳句協会会長 俳句美術館館長
  • 浪曲・虎造節保存会創立名誉会長

著書

  • 『八木健の川柳アート』
  • 『俳句 人生でいちばんいい句が詠める本』
  • 『滑稽俳句集』『すらすら俳句術』『教師のための俳句読本』
  • 『海外俳句入門』
  • 『こっけい俳句に咲くきりえ』他