- 第七回ロービジョン・ブラインド川柳コンクール
優秀作品および入選作品発表
第七回ロービジョン・ブラインド川柳コンクール
優秀作品および入選作品
最優秀賞
読み返す
孫から点字の
年賀状
- 名前 ドランカーズ 様
- 部門 サポーター部門(一般の方)
- 解説 視覚障害のあるおばあちゃんに、孫が苦労して打った点字の年賀状が届きました。おばあちゃんは嬉しくて、毎日年賀状を読み返しています。
- 講評 おばあちゃんが何度も読み返すという嬉しい様子がうまく描かれています。視覚障害のあるおばあちゃんがご一族からどんなに大切にされているかが想像できてほのぼのとした気持ちになります。おそらく、幼いお孫さんがこの句のもうひとりの主人公であることも嬉しいですね。おばあちゃんを中心に広がりのある風景となりました。(八木健)
見えにくさを感じている方部門賞
待合で
肩借りる手を
温める
- 名前 武蔵野ゴリ庵 様
- 部門 見えにくさを感じている方部門(ロービジョン)
- 解説 病院の治療室では、目の不自由な私はスタッフの肩を借りて移動します。寒い季節に薄着のスタッフさんに冷たい思いをさせてはいけないと思い、私は待合室で外気とアルコール消毒で冷たくなった手を温めています。
- 講評 見えにくさを感じておられる方がサポートを受ける時に、このような温かい心配りをなさっていることに感動しました。「肩借りる手を温める」に感謝の気持ちが溢れています。こうした気持ちが優しい社会をつくるのですね。(八木健)
メディカル・トレーナー部門賞
握る手の
強さで分かる
信頼度
- 名前 Y.T 様
- 部門 メディカル・トレーナー部門(視能訓練士)
- 解説 ロービジョン患者様を誘導する際に、初回誘導する方だと不安から腕を強く握られる事が多いが、何度も誘導している患者様だと軽く握られる手から安心して身を委ねてくださるのが分かり嬉しい気持ちになります。
- 講評 人の気持ちは「言葉ではなく態度で伝わるもの」ということが良く分かる作品です。言葉で「信頼しています」と言われるよりも、よりしっかりと実感されたのですね。ロービジョンの方をサポートする立場で、「信頼されている」ことの喜びと同時に、仕事へのやりがいを感じる瞬間でしたね。(八木健)
サポーター部門賞
白杖に
「片手をどうぞ」
肩を出す
- 名前 いわG 様
- 部門 サポーター部門(一般の方)
- 解説 これまで街中で時々見かけたことはありますが、視力障がいの方に対して、積極的に声掛けをして、少しでも手助けが出来ればと思い句を作りました。
- 講評 この川柳コンクールは、ロービジョンやブラインドの方とその周囲の方々との相互理解を深めるだけでなく、一般の方々にも認識を深めてもらうことに意味があります。まずは視覚障害のある方に思いを寄せることが大事ですが、もう一歩進んで具体的に何かできることはないだろうか。この句は社会への提案として優れた作品です。(八木健)
NEXT VISION賞
これまでを
これからにする
杖と犬
- 名前 ほのぼの 様
- 部門 サポーター部門(一般の方)
- 解説 白杖と盲導犬が、これまでの生活をこれからの希望に変えてくれます。
- 講評 視覚を失うことは大きな不安を伴いますが、この川柳は、白杖や盲導犬という支えを得ることで、再び希望を見出せることを端的に表現しています。「これまでをこれからにする」という言葉には、過去の喪失を未来への歩みに変える力強さが感じられます。まるで霧が晴れるように、新たな可能性が開ける様子が伝わる作品です。NEXT VISIONは、視覚障害を持つ方々が失望することなく、前を向いて歩める社会を目指し、支援を続けています。(NEXT VISION)
日本眼科医会賞
足音で
「誰かわかる」に
驚いた
- 名前 りくぱぱ 様
- 部門 サポーター部門(ヘルパー)
- 解説 1人の視覚障がい者に対して複数名の支援者が入るのですが、その支援者の足音の違いだけで誰か分かると言っていたことに驚きました。人の数だけ足音の種類があるんだと知った瞬間でした。
- 講評 晴眼者は普段は生活音をほとんど気にしておりませんが、ロービジョン者にとって、音からの情報はとても大切であり重要です。歩き方にもそれぞれ個性があり、その足音からの情報だけで人物を特定できることにハッとさせられました。自分の歩き方が個性的だと少し恥ずかしさを感じてしまいます。(日本眼科医会)
総評
八木健審査委員長
今回の「ロービジョン・ブラインド川柳コンクール」は、応募総数がこれまでで最多の4004句なりました。また、公益社団法人NEXT VISION、公益社団法人日本眼科医会のほか、新たに厚生労働省にもご後援いただき、計61の団体にご協力いただき、協力団体数も過去最高となりました。
「ロービジョン・ブラインド川柳コンクール」が支持され、ますます広く認知されて、その結果、多くの方に、視覚障害のある方の生活やお気持ちに寄り添う機会が増えていることを有難く思います。
今回の応募作品を拝見して、一番多く川柳に詠まれていた困り事は、「歩きスマホ」でした。昨年と同じく「QRコード」や「セルフレジ」「タッチパネル」などの電子機器に関連することへの困り感も詠まれてはいましたが、昨年よりは少し減ったようです。それら機器への対応は、少しずつ慣れてこられたり、手伝っていただくことで解決しておられるのかもしれません。ところが、「歩きスマホ」は機器ではなく人間が相手ですから、「歩きスマホ」をしている人自身に、その行為はとても危険で、強い恐怖を感じさせるものだということを認識していただくしかありません。歩く人、一人一人がモラルを高めることにかかっています。
今回も、応募作品の一つ一つに学ぶことが多く、「ロービジョン・ブラインド川柳コンクール」の果たす役割と意義の大きさを実感しました。視覚障害をもつ方の存在を知ること、その立場になって考えること、思いやることの大切さを川柳が改めて気づかせてくれました。