第三回ロービジョン・ブラインド川柳コンクール
優秀作品および入選作品発表

最優秀賞

心の目
開くと見える
別世界 

  • 名前 大阪のアン
  • 部門 見えにくさを感じている方部門(ロービジョン)
  • 解説 加齢とともに、心の目で見ることが多くなりました。これだけ長生きすると、あれもこれも心にクリアな映像として残っています。目の前が霞んでいても、心の映像が鮮明な画像を再現してくれます。
  • 講評 普段は忘れているものに「心眼」があります。この句には心眼の存在に気づいた感動が息づいています。視力が低下したり失明したりしても、心眼で見れば物事の本質が見えます。それは別世界と言えるほど素晴らしいものだとして多くの人に勇気を与える作品です。

NEXT VISION賞

見えるふり
やめて気持ちが
楽になり

  • 名前 夢々(むむ)
  • 部門 見えにくさを感じている方部門(ロービジョン)
  • 解説 先天性弱視なので、ずいぶん長い間見えるふりをして健常者に紛れて生きてきました。40歳を過ぎた頃から障害を受け入れ、いまでは視覚障碍者として生活しています。壁を乗り越えて気持ちが楽になりました。
  • 講評 NEXT VISIONではロービジョンになっても活躍できる社会を目指して視覚障害の不理解をなくすisee! 運動を展開しています。
    見えづらくなったことを周囲に伝えることから理解が深まります。障害を受容するには時間が必要ですが、カミングアウトすることが心のバリアを無くす第一歩です。

見えにくさを感じている方部門賞

妻と杖
二人五脚の
五十年

  • 名前 夜の腸
  • 部門 見えにくさを感じている方部門(ブラインド)
  • 解説 心の杖と白い杖、弱視から全盲に至る道のり、妻も白杖も長い間寄り添ってくれました。社会人としての使命を終え、充実した社会生活をしみじみ振り返っている昨今です。
  • 講評 結婚して五十年は金婚式ですね。夫婦で山坂を越えてきた歳月は、まさに二人三脚です。しかし、この五十年で忘れてならないものに杖の存在がありました。二人四本の脚に杖が一本。二人五脚の歩みでした。支えてくれる妻と杖への感謝の気持ちが溢れていますね。

メディカル・トレーナー部門賞

私より
真実みえてる
患者さん

  • 名前 富士見
  • 部門 メディカル・トレーナー部門(看護師)
  • 解説 私達の動きを、空気で感じ取っているかの様な発言をされます。
  • 講評 物事を把握する力は、目で視る力だけではありません。感性や判断力、教養も必要です。看護師さんは、看護の技術や知識においては専門家です。しかし、真実を見抜く力は人生経験豊かな患者さんにはかないませんね。そのことに気づいたのが素晴らしい。

サポーター部門賞

お役解け
盲導犬の
足くずす

  • 名前 ゆき
  • 部門 サポーター部門(一般の方)
  • 解説 盲導犬の緊張が解けました。
  • 講評 盲導犬は、その役目をきっちり果たす上に従順です。盲導犬自身のストレスは大変なものでしょう。盲導犬としての一日の務めを終えて、やっと気を緩めることができます。その安堵の気持ちが足を崩す仕種に現れています。有難う、盲導犬さん。ゆっくり休んでね。

総評

「応募作品に学ぶロービジョンの世界」

審査委員長 八木 健

 応募作品を選句、審査させていただき、大変、勉強になりました。見えにくさを感じている方はこんな風に思っておられるのだなあ、専門職の方にはこんなご苦労があるのだなあ、世の中にこんな仕組みがあれば良いのになあ、などなど普段考えたことのなかったことに気づくことができました。

 入選にはならなかったものの、気づきを与えてくれた作品をご紹介しましょう。

1.ロービジョン体験しなきゃわからない
・タクシーを下りるとそこは植え込みだった
・マスク顔声が頼りを体験し

2.なんとかしなきゃ世間の無理解
・盲導犬拒否する店を拒否したい
・社会から段差と差別なくしたい

3.なるほどね逆転の発想
・耳で見るあなたはきっと男前

4.言葉を使いこなして技あり
・視覚へと刺客のような小さい字
・視野欠ける人への配慮欠かさない

5.驚くべき精神力に感動
・くちびるで読む先生にはげまされ
 (両手が不自由なためくちびるで点字を読む)

 応募作品から、お困り事やご要望だけでなく、豊かに広がるロービジョンの世界も学ばせていただきました。

 世の中に心優しい人はいるのですが、知らない、気がつかないことが多いのだと思います。ということは、一人でも多くの人に「ロービジョン・ブラインド川柳」を知っていただけたら、気づきが増えていくのではないでしょうか。そうして気がついてゆけば、見えにくさを感じている方が今よりももっと、より安全に安心して生活してゆけるに違いありません。

 「ロービジョン・ブラインド川柳」は、見えにくさを感じている方のことや、世の中の無理解を、よりはっきりと見えるようにしてくれます。今回で三回目となるこのコンクールは、単なる文芸としての活動の枠を超え、大きな社会的意義をもって大きく育っていこうとしています。

八木 健 先生 プロフィール

経歴

  • 元NHKアナウンサー
  • NHK「俳句王国」司会10年
  • 元『川柳マガジン』選者
  • 元愛媛新聞月刊誌『アクリート』川柳欄選者

現在

  • 日本農業新聞川柳欄選者
  • 月刊俳句総合誌『俳壇』選者
  • 愛媛CATV『八木健の川柳天国』主宰
  • 愛媛CATV『八木健の俳句遊遊』主宰
  • 滑稽俳句協会会長
  • 俳句美術館館長
  • 浪曲・虎造節保存会創立名誉会長

著書

  • 『八木健の川柳アート』
  • 『俳句 人生でいちばんいい句が詠める本』
  • 『滑稽俳句集』
  • 『平成の滑稽俳句』
  • 『すらすら俳句術』
  • 『教師のための俳句読本』
  • 『海外俳句入門』他