メガネ(眼鏡・めがね)のPARIS MIKI

【カオの履歴書】Vol.3 (後編)
CHALLENGER デザイナー 田口悟

2019.09.20

インタビュー後編では、自身が手掛けるブランドのデザインへのこだわり、東京五輪への思いに迫ります。

ASANOHAの後、ほかの会社でもデザインやってたんですけど、その頃Tシャツ生地やデニムの生産会社に行く機会があり、いろんな素材を目にしているうちに「自分で洋服作りたいな」と思うようになって。それでCHALLENGERを作ったんです。ここでデザインするときは、ストーリーを大切にしています。最初に、何を伝えたいのか、何を表現したいのかってことを考えます。自分の中から湧き出てくる感覚に従う感じです。

スケートボードって、ストリートカルチャーの中から生まれてきたもので、服装やスタイルと密接につながってるんですね。若者がスケートボードに憧れるのは、技の凄さもありますが、やってる人たちのスタイルがカッコ良くて、乗りこなしてるその姿がカッコ良くて、「自分もあんな風になりたい」って思わせる要素がたくさんあるからなんです。スケートボードをやるってことは自己表現するってことなんです。僕も自己表現したいっていう思いをCHALLENGERという場所で昇華させていると思っています。

国内のスケートボード人口は現在100万人くらいと言われていますが、世界で活躍する選手が増えたから、これからもっと増えるでしょうね。選手の年齢層も下がっていて、10代前半がどんどん出てきていますよね。ほんとに今のキッズたち、上手いんですよ。怖いもの知らずというか、思い切りがいいとうか、頼もしい!の一言です。東京オリンピックでも何人かはメダル獲れるんじゃないかな。金メダルだって狙えると、僕は本気で思ってますよ。

実は自分が競技に出ていた頃、スケートボードをスポーツとして捉えることに違和感を感じた時期もあったんです。高度な技を競うのは分かるのですが、それをジャッジするのは難しい。人によって技の難しさや美しさへの印象って違いますから。あの人高得点出たけど、ほんとにそうかなって思うことも多々ありますし。だけど、オリンピックという舞台を考えたとき、そういうこと全部ひっくるめて応援したいって思うようになりました。だって、日本のスケーターの凄さを世界にアピールできるわけですし、なんといっても国内でスケートボードをメジャーにする絶好の機会ですからね(笑)。

若い人に伝えたいこと。「好きなことを続けてほしい」ってことです。小学生の時、近所の花屋さんがボードで遊んでいる自分に向かって「大人になったからって理由でスケートボードやめんなよ」って言ったんです。その時は何を言われたのかよく分からなかったですけど、今はその意味が理解できる。多くの人たちが、もうこんな歳になったし、とか、こんなことやらないで仕事しなきゃっていう気になって、大好きなことをやめてしまう。それって、そこから先に訪れたかもしれない大きなチャンスを自ら放棄するってことじゃないですか。何より、生きる喜びを失うことにつながっていく。

僕は本当にただ好きっていうだけで、先のことなんて考えずにスケートボードをやっていた。

何かを目指していたわけじゃないけど、一心不乱にやってたら、自然と今いるこの場所にたどり着いたんです。今自分が好きなことをやって生きていられることに、心の底から喜びを感じています。だから、なんでもいい、大好きなことをやり続けることで、きっとなにかにつながるよってことを伝えたいです。

今でもスケートボード、もちろんやってますよ。スノーボードもやります。去年は骨4本折りました(笑)。肩甲骨と肋骨2本、そして手首も折っちゃって。それでもやめようなんて思わないです。僕、人間がポジティブなんです(笑)。骨を折るぐらいじゃなんとも思わないですよ。それ込みで楽しんじゃう。みんな、好きなことに対しては同じようなものじゃないですか(笑)。

CHALLENGERの展望ですか? うーん、ないですね(笑)。

今やりたいこと、やるべきことに一生懸命取り組むだけです。CHALLENGERのオープン当初からバンダナを手掛けていて、国内・海外で個展もやらせてもらっています。BANDANA LYZEツアーといって、これまで東京、マレーシア、香港、シアトル、サンフランシスコなど。今年は9月にニューヨーク、来年はカナダでやります。この活動をもう少し続けて行って、CHALLENGERをもっと世界に知ってもらえたらと思っています。

バンダナのデザインは、アメリカンコミックにインスパイアされたものが多いかな。最近、蛍光の塗料にはまってて、最近はほとんどこれ使って描いてます。

ブラックライトで絵を光らせると違う世界が浮かび上がるんです。例えばこれなんて、一見、昼間の動物たちの世界を切り取ったシーンに見えますが、真っ暗にして見てみると、後ろから人間の世界が見えてきて、人間世界の中にいる動物たち、みたいな雰囲気になる。和のテイストも入ってます? バンダナも自己表現の場なので、やはり自分のアイデンティティが出てくるのかもしれませんね。一つの絵に陰と陽を表現することに惹かれますね。

ほかにもいろんな作家さんやブランドさんとコラボレーションさせてもらっていますが、どのアイテムのデザインを考える時も楽しくて仕方がないんですよ。周りからは遊んでいるようにしか見えないかも(笑)。でもこれがまた、予想外の面白いことにつながっていくんですよ。不思議ですよね。これからもずっと、真剣に遊びます(笑)。

取材・文/サイトエンジン 増田弥生

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